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ある愛の話~追憶~後編  ヘレン・P・ムロスラ著『こころのチキンスープ』  より

2008/09/13 Sat



 それから何年か経った。

 ある日、休暇から戻ると、両親がいつものように空港に迎えにきてくれていた。

車の中で、母がいつものように聞いてきた。

旅行先での天気はどうだったか、どんな経験をしてきたか、とかいった質問だ。

でも、私は両親の態度に何か不自然なものを感じた。

しばらくすると、母が促すように父を構目でちらっと見て言った。

「ほら、父さん。あのこと・・・」

父はゴホンとせき払いをした。

「マーク・エクランドの家族から、昨日の夜、電話があったよ」

「本当? ずいぶん久しぷりね。最後に手紙をもらってから、もう何年にもなるわね。マークは元気にしてた?」

 父は静かに言った。

「マークはね、ベトナムで戦死したそうだ。葬式は明日だ
そうだよ・・・・・ご両親がお前にも出席して欲しいって言ってたよ」

 それを聞いた瞬間、時間が止まったように感じた。四九四号線のどこを車で走っていたかさえ、今でもはっきり覚えている。


 翌日の葬儀で初めて見る軍の棺には、あのマークが横たわっていた。

じっと目を閉じた彼の顔はとてもハンサムで凛々しかった。

その彼に向かって、私は心の中で叫んでいた。

マーク、先生に何か言ってちょうだい。

世界中の粘着テープを用意して、あなたが話してくれるのを待ってるから。

お願い、昔みたいにおしゃべりをしてちょうだい」

教会はマークの友だちでいっばいだった。

チャックの妹が「戦死した兵士を天国へ送る歌」を歌った。

よりによって、この葬式の日に、どうして雨が降らなければならないのだろう?

墓地では、さらにその思いが強まった。

牧師のお祈りに続き、軍のしきたりにそって弔いのラッパの音が響き渡った。

一人ずつ棺に聖水を振りかけてお別れをした。

最後に私の番がやってきた。

そこへ、棺の付添いとして立っていた兵士が近寄って来た。

「失礼ですが、マークの数学の先生ですか?」

 私は棺を見つめたままうなずいた。

「マークから先生のことはよく聞いています」とだけ言うと、その兵隊は敬礼をして去っていった。


葬儀が終わると、クラスメートたちは会食のためにチャックの家に向かった。
そこでは、マークの両親が、私を待っていた。

「先生にぜひお見せしたいものがあります」と、ポケットから財布を出しながら父親が話しかけてきた。

「マークが死んだ時、身につけていたものです。先生なら、これが何かおわかりになると思います」。

そして財布の中から二つ折りになった紙を、破れないように丁寧に取り出した。

私には、それが何かすぐにわかった。

昔、クラスメート全員がマークのいいところを書き、さらに私が書き写したあのリストだった。

何度も何度もマークが手にとって読んだのだろう。

破れそうになったところを何か所もテープでつなぎ合わせてあった。

 マークの母親は、

「先生、ありがとうございます。ご覧のとおり、マークはこれを宝物にしていたんです」と話した。

 教え子たちがマークの両親と私のまわりに集まってきた。

チャックは、はずかしそうにほは笑み、こう言った。

「先生。僕、例のリストをまだ大事にとっているんですよ。
机の一番上の引き出しに入れています」

 ジョンの妻もその後をついで言った。

「私たちも結婚記念アルバムに入れています」

「私もやっばり持ってますよ、先生」とマリリンが続いた。

 やがて、ビッキーがハンドバッグから財布を取り出すと、中からすっかり古びて擦り切れた紙が現われた。

それを見せながら、彼女は目を大きく見開きまばたきもしないで言った。

「私も肌身離さず持ち歩いています。あのリストは、みんなにとってそれだけ大事なものだったんです」

 その言葉を聞いたときだった。

私はついにこらえきれなくなり、椅子に座り込んで泣き始めた。

死んだマークと、そのマークに二度と会うことのない友人たちのために、涙はとめどもなく流れ続けた。



ヘレン・P・ムロスラ著『こころのチキンスープ』
(訳:木村真理/土屋繁樹)






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さんかるぱ

Author:さんかるぱ
アメリカ在住13年。後、大阪に居を構え広い意味での「癒し」に関わる。

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